放送で出てきた『Honda Sports&Eco Program』というのをご紹介しておこう。このプログラムで使用されている車両はホンダCR-ZでMTEC(無限)がサーキット走行向けにロールケージや4点式シートベルト、キルスイッチといった安全装備を施すとともに、サーキット用のサスペンション、競技用タイヤの横浜ゴム・ADVAN A050、耐久レース用ブレーキパッドなどの機能パーツを盛り込んで造ったモデル。いわゆるN1規定のワンメイクレース車両に近い内容となっている。
『Honda Sports & Eco Program』は、モータースポーツ入門の敷居をドーンと下げた画期的なプログラムで、このCR-Zが用意されているほか、ヘルメットやレーシングスーツもレンタル可能、A級ライセンス等も不要と、本当に身一つでサーキットにいけば誰でもがレーシングドライバーに変身できてしまうものだ。
まったくの初心者でも心配はいらない。ベーシックスクールではいきなりサーキットを走るのではなく、まずは広場でドライビングポジションの取り方やブレーキングの練習といった基礎から始め、マシンコントロール、コーナリングと徐々にサーキットを走るためのテクニックを身につけていく。講師はフォーミュラ・ニッポンやスーパーGTに参戦している一流のレーシングドライバー。マシンの面倒を見るのは無限のスタッフと、万全の体制だ。
スクールを修了すれば「エコチャレンジ」「10リッターチャレンジ」といレース形式のプログラムも用意されている。レーシングスピードで走りながら、燃費も競うというところがポイント。ハイブリッド・スポーツのCR-Zに相応しい内容となっているのだ。詳しい内容や参加方法などは公式ホームページのhttp://www.honda-crz-se.jp/を参照していただきたい。
今年で15周年を迎えるJoy耐は、年に一度開催される7時間耐久レース。本格的な公認レースではあるが、選手権はかかっておらず、使用する車両も市販車ベースのN1/N2規定となっているためハイアマチュアが主体。常に80台以上が参加するというから、日本でもっとも盛り上がっている参加型レースと言えるだろう。
面白いのは燃料制限があること。
スタート時は30Lまでしか搭載してはならず、途中の給油も1回につき30Lまで。しかも給油するには10分のストップが義務となる。つまり、給油回数はなるべく少ない方が有利であり、燃費と速さのバランスが求められる頭脳ゲーム的な要素があるわけだ。
しかも、無限が製作した『Honda Sports & Eco Program』用のCR-Zは、1周あたりの燃料消費とラップタイム、バッテリーのSOC(充電状態)が表示される特製メーターが装備されているので、細かくドライビングを追求していくことが可能。さらに、F1のKERSのように、任意でモーターアシストをかけることができるオーバーテイクシステムが設定されているから面白い。
ドライビングは速さだけではなく、いかに電気を効率良く貯め、使っていくか、それによって燃費とラップタイムを稼ぐかを考える必要がある。
減速エネルギーを電気に変換する回生ブレーキを有効に使うには、通常のサーキット走行のようにハードブレーキで制動距離を短くするのではなく、緩く長いブレーキングを行ったほうがいい。ただ、それでも加速のアシストをバンバンと使ってしまうと電気はあっという間に底をついてしまうので、駆動時にエンジンの力で発電させるというのもテクニックだ。SOCのメーターと睨めっこしながら走っていると、「これが21世紀型の新しいモータースポーツなのかな?」という新鮮な気分になる。
Tokyo Next Speed 無限 CR-Zと名付けられたマシンには石井のほか、モータージャーナリスト仲間で、元同僚の橋本洋平とまるも亜希子が搭乗。3人で7時間を走り切った。結果は、見事Class1(エコクラス)で優勝! ……なのだが、じつは今年はクラスに2台しか参加していなかったというオチも!? でも賞金5万円もらったから良しとするか。
そうそう、このレースの給油はガソリンスタンドへ手押しで向かわなくてはいけないというルールがあるので、ドライバー以外にも手伝ってくれるスタッフが必要。人手不足気味だったTokyo Next Speed 無限 CR-Zでは、現場に見学に来ていたザ・モーターウィークリー・プロデューサーのタカハシを急遽手押し要員に仕立てあげるという暴挙に出たのでした。腰痛になってなきゃいいけど……!?