今週は、金属管のフルートと木管のフルートの違いについて、萩谷康一さんにお話を伺いました。
🪈金属管のフルート (現代の主流)
全体が金属で作られたフルートです。明るく輝きのある、キレのよい音色が特徴です。
19世紀半ば、ドイツのテオバルト・ベーム(Theobald Boehm)によって、初めて全体が金属で作られたフルートが考案されました。材質だけでなく運指(指使い)も一新されました。それまでのフルートとは異なる力強い響きを持つようになり、大作曲家 リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)は、この新式のフルートを聴いて「それはフルートではない。大砲だ!」と評したと伝えられています。
🪈木管フルート(伝統的なタイプ)
管体は、長い時間をかけて自然乾燥させた上質なグラナディラ(アフリカン・ブラックウッド)などの木材で作られています。渋く落ち着きがあり、柔らかく温かみのある音色が特徴です。
17世紀のバロック時代のフルートは、主に木材で製作されていました。3~4つに分かれた管をつなぐ継ぎ目には、補強や装飾のために象牙が用いられることがありました。また、全体を象牙で製作した豪華なフルートも存在しました。
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フランスとドイツで異なった普及の歴史
🇫🇷 フランス
フランスでは、パリ音楽院でベーム式フルートを用いて教育を行うことが正式に決められました。その結果、金属製フルートはフランス全土へ急速に普及しました。
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🇩🇪 ドイツ
一方、ドイツでは、新しいフルートの音色や響きが当時の演奏様式には受け入れられにくかったためか、金属製フルートはすぐには普及しませんでした。木管フルートが長く使われ続け、第一次世界大戦から第二次世界大戦の頃にかけて、金属製フルートを演奏するフルーティストが徐々に増えていきました。
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新品の木管フルートは「慣らし吹き」が必要
現在では、それぞれの好みに応じて金属製フルートと木管フルートを選ぶことができます。ただし、新品の木管フルートには、購入後すぐに長時間吹いてはいけないという特徴があります。
🪈 新品の金属製フルート
新品の金属製フルートは、購入後すぐに通常どおり演奏しても特に問題はありません。
🪈 新品の木管フルート
一方、新品の木管フルートは、最初から長時間吹き続けることは避ける必要があります。
使い始めは数分程度、演奏したら吹くのをやめて楽器を十分に休ませます。これは、急激な湿気や温度変化によって木製の管体にひび割れが生じる恐れがあるためです。
その後は、毎日少しずつ演奏時間を延ばしながら、数か月かけて楽器を慣らしていきます。慣らし吹きが終われば、通常どおり演奏できるようになります。具体的な方法については、楽器製作者やメーカー、あるいは購入した楽器店に相談するとよいでしょう。
また、木管フルートはケースから取り出して吹き始めた直後は、金属製フルートよりも管体が温まりにくいため、音程(ピッチ)が安定するまでにやや時間がかかります。
その一方で、演奏中に長い休憩があっても温度が下がりにくく、音程が大きく変化しにくいという利点もあります。
吹き終わった後もケースにしまう前に、管の内側に残っている水分を丁寧にしっかり拭き取ります。定期的なメンテナンスも必要です。
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木管フルートの魅力
最大の魅力は、木管ならではの吹き心地と、繊細で温かみのある音色にあります。
木管フルートで金属製フルートのような響きを目指す奏者はほとんどいませんが、金属製フルートを吹きながら、木管のような柔らかく豊かな音色を理想とするフルーティストは少なくありません。
1980年頃までは、ドイツのフルーティストには、木管的な太く深みのある音色を志向する演奏が比較的多く見られました。また、イタリアでは、セヴェリーノ・ガッゼローニ(Severino Gazzelloni)が、金属製フルートを用いながらも、イタリア声楽のベルカントを思わせる豊かな音色を追求したことで知られています。
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<セヴェリーノ・ガッゼローニの演奏スタイル>
ガッゼローニのフルート演奏は、イタリアの伝統的な声楽である「ベルカント(美しく歌う)」唱法になぞらえられることがあります。
息を豊かに使い、黄金のように艶やかで丸みのある響きや、喉が開いたような温かみのある音色、そして歌うように滑らかで表情豊かなフレージングが大きな特徴です。
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フルート奏者・Severino Gazzelloni
CDの収録で使用されていたフルートは、おそらく、通常よりやや大きめの歌口を備えた、金メッキ仕上げの銀製ヨハネス・ハンミッヒ製フルート(Johannes Hammig flute)ではないかと思われます。
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萩谷康一さんの苦い経験…
「実は、手に入れたばかりの一流メーカー製の木管フルートにひびを入れてしまったことがあります。幸い修理することはできましたが、そのときの精神的なショックは今でも忘れられません。」
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