『ピアノ・グラニテ』は、ピアニスト・伊集院紀子さんが、演奏機会の少ない名曲や作曲家をご紹介するコーナーです。伊集院紀子さんによる演奏もあわせてお楽しみください。
今月は、先月に引き続きイギリスの作曲家、ヨーク・ボーエン(York Bowen) の作品をご紹介いただきました。
🎹 伊集院紀子さんは、2026年10月30日に 杉並公会堂 小ホール にて、チェリストの ミハル・カニュカ氏、ヴァイオリニストの レオシュ・チェピツキー 氏と共演し、ピアノ・ソロおよび室内楽プログラムによるリサイタルを開催予定です。本日演奏していただいたヨーク・ボーエン ピアノ・ソナタ第6番も演奏プログラムに予定されています。
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エドウィン・ヨーク・ボウエン (1884年 - 1961年)
Edwin York Bowen, pianist and composer
ヨーク・ボーエン(York Bowen)は、ロンドン生まれの作曲家で、三人兄弟の末っ子として生まれました。母は音楽家、父はウイスキー蒸留会社「Bowen & McKechnie」の創設者でした。幼い頃から音楽的才能を発揮し、奨学金を得て王立音楽アカデミーに入学。1905年まで、ピアノをトビアス・マテイ(Tobias Matthay)に、作曲をフレデリック・コーダー(Frederick Corder)に師事しました。
1909年には王立音楽アカデミーの教授に任命され、1961年11月23日に亡くなる2年前まで教鞭を執りました。卓越したピアニストであると同時に、ヴィオラ奏者、ホルン奏者としても優れ、その経験が管弦楽作品における巧みな書法に大きく寄与したといわれています。
ボーエンは160曲以上の作品を残しており、ピアノ曲がその大半を占めますが、4つの交響曲、4つのピアノ協奏曲、さらにヴァイオリン、ヴィオラ、ホルンのための協奏曲など、多彩な管弦楽作品も手がけました。ホルン奏者としては、第一次世界大戦初期に軍楽隊に加わるなど、演奏家としても成功を収めています。
若き日のボーエンは、カミーユ・サン=サーンス(Camille Saint-Saëns)から「イギリスの若い作曲家の中で最も注目すべき存在」と絶賛され、戦前にはピアニスト、作曲家として華々しい活躍を見せました。その豊かな旋律美と華麗な作風から、「イギリスのラフマニノフ」と称されることもありました。しかし戦後になると、後期ロマン派的な作風は時代の潮流にそぐわなくなり、次第に評価は下火となっていきます。
1961年の没後、多くの作品が絶版となり、演奏機会も限られていましたが、近年は録音の充実や、モニカ・ワトソンによる著書『ヨーク・ボーエン 生誕100周年記念』(1984年、テムズ出版)などを契機に、演奏家や聴衆の関心が再び高まりつつあります。なかでも《24の前奏曲》をはじめとするピアノ作品やヴィオラ・ソナタは、その芳醇な抒情性と独自の詩情によって、今日あらためて注目を集めています。
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写真:
ピアニスト 伊集院紀子さん
Noriko Ijuin, piano
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