
今週は「山岳写真データベース」に注目!
今夜もスタジオにお迎えしたのは、公益社団法人日本山岳会 会員で、東邦大学 理学部 生物学科 植物生態学研究室 准教授 下野綾子さんです!
「山岳写真データベース」は、ネイチャーポジティブな社会を実現するために、産官学民、様々なステークホルダーが関わり新しい社会システムを作ろうと、東北大学を代表とする「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」という活動の中で始まったものです。「ネイチャーポジティブ」とは、2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で合意された目標。今、世界的に見ても生物多様性っていうのは減少していますが、その減少を2030年までに食い止めて上昇に転じようというところを目指しています。生物多様性がどう変化していきているのか知るためには、過去からのデータがとても大切となってきます。しかし、日本の山岳地域は、急峻なためアクセスが難しく、昔からの研究データが少ないため、山岳環境の変化を登山者の写真から見える化して環境保全に生かそうと、今年4月に、日本山岳会と、東北大学、そして下野先生の東邦大学が協力してサイトが公開されました。
今夜は海外での高山植物の研究のお話から。
ヨーロッパのアルプスでは1世紀以上前からの調査が始まり長期的なデータがあるんだそうです。そこからわかってきた事として、地球温暖化によって植物の生息域がより標高の高い場所へ移動していることが確認されています。一方で、山頂付近の植物は土壌が未発達なため移動できず、下から押し上げる植物に生息域を奪われ衰退する危険性が指摘されています。日本では、このような長期データが乏しいため、「山岳写真データベース」のような市民参加型の調査が、現状を把握するために非常に重要となります。
そして、日本の山では環境の変化には、私たち人間も大きく関わっているというお話も。
火曜日にもお話がありましたが、かつて明治時代。ニホンジカは狩猟によって絶滅の危機に陥った事から、その後1960~1970年代まで捕獲が制限された時期がありました。それと同じ時期に拡大造林が行われ、森での植生が入れ替えられた結果、森に光が入り林床植物が芽吹き、それがニホンジカの餌となり増加の最初の要因になったと言われています。そのニホンジカが増えたことで、山の植物を食べつくしてしまう採食圧によって植生が変わり、さらに雪が嫌いなニホンジカが地球温暖化のために雪が減ることでより高い山に入り、そこでフンをすることで下界の植物が山に広がっているのではないかと。そのため現在下野先生たちの研究室では、ニホンジカが高山植物に及ぼす影響、さらにニホンジカによる種子散布についても調べていらっしゃるそうです。
さらに、下野先生からは山の環境の変化が私たちに暮らしと切っても切り離せないというお話も!!
詳しくは下記の音声配信をチェック!
最後に下野先生に私たちたちができる事について。
私たちはこれまで地球からの恩恵を無償で受け取るだけでした。しかし、「ネイチャーポジティブ」を実現するためには、生物多様性を守るための環境保全活動が経済的に成り立つ仕組みが必要です。そのためには、私たち消費者が環境に配慮した製品やサービスを積極的に選ぶことが重要になります。一人ひとりの「選択」が、企業が環境保全に取り組むインセンティブとなり、社会全体の行動を変えるきっかけになると、アドバイスもいただきました。
今、地球で何が起こっているのか。あなたの山での写真が、今後の環境保全につながる一枚になるかもしれません。詳しくは「山岳写真データベース」のサイトを覗いてみてください。
山岳写真データベース
https://www.mountain-photo.org/
東邦大学 理学部 生物学科 植物生態学研究室
https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/bio/plant_ecology/
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