表紙にふさわしい撮影場所はどこだろうと思いを巡らせ、ピンときたのは5年前に光邦さん時代の「Tresen+」内で自転車でリポーターをしていた時に見た景色。スマホの地図を頼りに秦野から東に向かう道中、車の通行の激しい上り坂をヘロヘロになりながら越え、トンネルを抜け、下り坂を進み始めると突然その景色が現れた。峠の下に広がる無数の建造物。たくさんの人々が生活をする大きな街。脳内で「横浜だ!」と叫び、勢いよく坂を下った。疲れていたんだろう。今ならわかる。それはおそらく平塚だ。しかし、あの景色は上り坂にはめっぽう弱い小径折り畳み自転車の疲れを吹き飛ばしてくれたのをよく憶えている。
自転車でのリポートは通りすがりのドライバーさんや、それぞれの街の人々など、スタジオにいるだけではわからない聞き手の表情に出会える貴重な時間だった。この企画を機にもう一度あそこに行ってみることにした。記憶を頼りに調べるとあの場所は246号線、秦野から伊勢原に向かう途中の善波峠だった。乗り物は自転車からジムニーに。軽快に現地へ向かうと、善波トンネル付近はやはり素晴らしい景色。伊勢原方面に平塚の街、秦野方面に進めば富士山が眼前に鎮座する。
撮影に取り掛かるべく駐車場所を求めて脇道に入り、フラフラ進んでいくと別のトンネルが現れた。それが今回の表紙写真、旧善波トンネル。肝心の峠から見る風景はうまく撮れなかったが、導かれるように辿り着いたのは人工物を取り込む自然の逞しさを感じられる景色。他にも清川村周辺や中新田かかし祭りも撮影したけど、これが一番お気に入り。自転車から車になり、またひとつ神奈川に思い出の景色が増えた。
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