
花のトレンド・販売データなどを調査・分析して販売している、
株式会社 大田花き 花の生活研究所の内藤育子さんに、
お花に関する様々なことを伺っていくハナラボのコーナー。
武居>内藤さん、今日はどんなお話でしょうか?
内藤>いま、切り花の流通業界で、輸入の花(キクとかバラとか)は30%くらいなのですが、最初に商業的に輸入された花は何だと思いますか?
武居>バラとかが最初じゃないんですか..!?なんでしょうか!?
内藤>実は、ランの一種である「デンファレ」なんです。
武居>デンファレ!ハワイ料理やタイ料理によく乗っている、白と濃いピンクのあの花ですね!
内藤>そうです!あれ、デンファレっていう名前なんですけど、本名はデンドロビウム・ファレノプシスといいます。デンドロビウムの中で「ファレノプシス(コチョウランのこと)に似た品種」という意味なのですが、フルネームは長いので、「デンファレ」と省略された名前が定着しています。
武居>デンドロビウム・ファレノプシスをデンファレ!すごい略し方ですね。
本名はなかなか覚えにくそうですが、どういう意味なのでしょうか。
内藤>デンドロビウムという名前は、ギリシャ語の「dendron(木)」と「bios(生命)」に由来していて、木の上で生活をする着生植物であることを示し、Phalaenopsis(ファレノプシス)は、ギリシャ語で「蛾に似た」という意味です。
1876年にオーストラリアの植物学者が見つけて命名しました。
武居>タイ料理やハワイ料理に乗っているということは、そのような国から輸入されたということですか?
内藤>はい。1970年代前半に、タイ王国から輸入されたのが商業的に輸入された花の最初といわれています。最初はマダム・ポンパドールという品種が主流だったのですが、色合いが濃い紫で、欧州では人気でしたが日本では濃すぎると、1980年初めに花もちのいい淡いピンクが台頭してきました。
武居>それがお料理の上に載っているあのタイプですね。
内藤>そうです。ソニアという名前で、ソニアは生産性もいいし、
マーケットでも人気が出てきて、マダム・ポンパドールは、市場から姿を消していきました。
武居>じゃあソニアってだいぶ息が長い商品ですね。
内藤>その通りです。ソニアが世に出て、すでに40年を越えますが、
切り花のすべての品種の中でこれほど商品サイクルの長い花はほかに
見あたりません。
武居>デンファレのソニアってすごい花なんですね。
内藤>そうなんです。大田市場に流通するデンファレの45%-50%くらいがソニアっていう、もうデンファレの中でも挽回不可能なエース。今はデンファレだけで80品種くらい流通しているのですが、数多くの新しい品種が誕生したといえども、なかなかソニアを超える花はありません。
武居>どのような国から日本に輸入されるのですか?
内藤>ほとんどはタイです。流通は1年中。例えばタイのバンコクでは、年間平均気温は約29℃ほどで、高温多湿な熱帯モンスーン気候のため、高温多湿を好むデンファレの生産に適しているんです。
武居>日本では生産されていないんですか?
内藤>国産もあります。5%くらいあって、沖縄で作られているのですが沖縄産の真っ白な美しいデンファレは、最高級品に位置付けられています。
武居>国産と輸入品は、質や量でそれぞれすみ分けされているのですね。
内藤>はい。切り花のランはオンシジウムとかコチョウランとかシンビジウムとかたくさん流通していますが、圧倒的に多いのがデンファレで、ランの中でも価格もフレンドリーですし、高級なイメージがありながらも、気軽に楽しめる花といえるでしょう。
武居>それもタイでたくさん生産されて、日本に輸入があるからですね。
内藤>本当にその通りです。日本経済の成長を背景に輸入された花第一号のデンファレは、日本の明るい未来を予見させ、花産業を照らすともしびでもあったと言えるでしょう。昭和40年代の高度成長期に入ると、ライフスタイルは欧米化し、花の需要も大きくなっていきました。そのサイクルに載って、輸入関税も基本0%の中、デンファレばかりでなく、キクやバラ、アマリリス、オンシジウムなどのほかの花も世界各地から輸入されるようになり、現在に至っています。
武居>色どりに溢れた花業界の道を拓き、昭和時代からずっと流通しているデンファレですが、現在でも人気が廃れていないのはすごいことですね。
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