
花のトレンド・販売データなどを調査・分析して販売している、
株式会社 大田花き 花の生活研究所の内藤育子さんに、
お花に関する様々なことを伺っていくハナラボのコーナー。
内藤さん>11月はキクが1年で最もきれいに咲く時期で、全国あちこちで菊花展が開催されたりしていますよね。武居さんはキクにどんなイメージをお持ちですか?
武居さん>パスポートの表紙に描かれていたり、天皇家の紋章になっていることでも有名ですよね。サクラと並び、日本の花というイメージがあります。
内藤さん>知らない人はいないくらい、私たちにとってなじみの深い花ですよね。もともとは中国原産の花なのですが、奈良時代中期に遣唐使によって日本に伝えられてから、上流階級の人々にこよなく愛され、キクの模様などが愛用されました。とりわけ後鳥羽上皇が気に入って「私の家紋にする!」としたことで、現在においても天皇家の紋章となっているとされているんですよね。
武居さん>それだけ高貴な花だったというわけですね。
内藤さん>はい。中国から伝わった当時は皇室や貴族、 武家といった権力者階級にしかキクのマークを使うことは許されていませんでしたが、 江戸時代に入ると庶民の間にも広まりました。
武居さん>江戸時代といえば、園芸文化が盛んな時代ですよね。
内藤さん>そうなんです。江戸時代には庶民の間でもキクの改良が重ねられ、品種、花形なども豊富になりました。江戸末期に日本にきたスコットランドの植物学者ロバート・フォーチュンは、九州を旅していて、一般の人が庭でキクをきれいに育てているのが素晴らしいといっています。言葉は通じないけど、それを欲しそうにジーッと見ていたら、持ち主がその視線の意図を汲み取ってキクをくれたと。この日本人の優しさがまた素晴らしいと。花を育てる素晴らしさと日本人の優しさとを二重に褒めているんですよね。
武居さん>花を通じた異文化コミュニケーションですね。言語は必要ない感じ。
内藤さん>ですね。園芸にそんな力があるんですね。明治以降も、キクは国内で改良が重ねられて、生産が盛んになっていったんですよね。
武居さん>農産物でいうお米みたいな存在が、花業界のキクというイメージでしょうか。
内藤さん>その通りです。日本の花生産では、キクがエースです。本当に主食のような感じ。世界で最も生産されている花はバラですが、日本で最も生産されているのは、圧倒的にキクです。
武居さん>先ほど大田市場を一緒に歩いていたら、見たことのないような素敵なキクがたくさんありましたね。
内藤さん>最近は、大正ロマンを感じるような少しレトロ感のあるクラシックな感じのキクがたくさん流通しています。特にこの時期は品種数も本数も充実して、皆さんがお花屋さんで見る機会も多いと思います。
武居さん>花びらがシュッと細く、放射状に延びたものから、ぽってりとした花びらで中心を抱え込むように咲くものまで、いろいろありましたね。中には、ソフトボールくらいの大きさ
で球状に咲いたものもあり、びっくりしました。
内藤さん>そうですね。シュッと細く伸びるタイプを、切花ではスパイダー咲きといったりします。大正ロマンを感じるような大輪のタイプは、ジャパニーズな感じかもしれませんが、意外と洋風にも使えて、大きな会場装飾にも合いますし、豪華な花束にも使えます。ソフトボールみたいなのはフルブルーム、「完全に咲いた」という意味なのですが、キクは染めやすいので、最近はこのフルブルームがおしゃれなニュアンスカラーに染めて出荷されたりして、これがまた人気なんです。
武居さん>フルブルームのキクは、先日スーパーマーケットでも販売しているのをみました!
スーパーに並ぶほどメジャーになっているのですね。その値札には、フルブルーム“マム”とあったのですが、キクではなく「マム」といったりするのですね。
内藤さん>そうなんです。よくご覧になりましたね。キクというのがなんだか仏様に供える花のイメージに直結するのを避けるために、またそういうイメージを払しょくするために英語圏で呼ばれている名前を採用して、マムと呼んでいるんですよね。
武居さん>英語圏ではマムって呼ばれているんですか?
内藤さん>そうなんです。学名のクリサンセマム(「黄金の花」の意味)からマムと呼ばれているんです。
武居さん>確かにキクという響きよりもマムの方がなんだかカジュアルで、お部屋を彩るのにも素敵な花に聞こえますね。
ということで今日は「11月におすすめの花、菊」をご紹介しました。
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