
今回は、音楽ライターの舟見佳子(ふなみ・よしこ)さんにお話しを伺いました。
地元、横浜の小・中・高校を卒業後、東京造形大学デザイン学科時代には、FLYING KIDSやスピッツのメンバーと同じ音楽サークルに。その後、新卒で某FM誌の編集部に入社。Fm yokohamaでも社屋が山下町の時代から取材などされていた。現在はフリーの編集者・ライターとして、30年のキャリアでいらっしゃいます。
著書には、上杉昇(元WANDS)自伝【世界が終るまでは…】および【世界が終るまでは…2】や、T.M.Revolution【T.M.R.LIVE REVOLUTION’02】ほか。
音楽ライターとして、主にミュージシャンへのインタビューやライブ観覧を通して、雑誌やWEBサイトに記事を書いている舟見さん。その他、新譜紹介や音楽映画のレビュー、ツアーパンフレット、ファンクラブの会報を書くといった事もなさっています。
一般向けの記事から専門誌まで執筆の場は幅広く、「情報誌や新聞では、特に音楽ファンではない人にも理解してもらえるように専門用語をなるべく使わないなど、分かりやすい文章を。逆に、音楽専門誌の記事では、熱心なファンの方やより知識を得たい読者のために、突っ込んだ内容まで書きます」
特に楽器や機材の専門誌では、読者の方が基本的な知識はお持ちであるため、具体的な分析記事や役に立つ情報を伝えられるように意識されているという。
舟見さんが音楽ライターを目指すきっかけは、中学生時代!
「ちょうどキッス、クイーン、エアロスミスのロック御三家が全盛期で、洋楽の情報を知りたくて<ミュージックライフ>や<音楽専科>といった洋楽専門誌を貪るように読んでいました。大好きなアーティストの情報を伝えてくれる音楽雑誌が大好きすぎて、『将来は絶対、音楽雑誌を作る人になる!』と決意したのです」
美術大学で編集デザインを専攻し、新卒で某出版社のデザイン室にデザイナーとして入社されるも、人が足りないという理由で編集部に異動。そこで、取材の仕方や記事の書き方を学び、その後フリーになる。
夢を実現された舟見さん。又、中学生時代から取り組んでいたバンド活動も今に活きていると仰る。「趣味でバンド活動をしていましたが、音楽をやる側の気持ちや事情が理解できるというのは、ライターとしての強みになったかなと思っています」
これまで相当数のミュージシャンにインタビューされてきた中、特に印象に残っているお話を。
「柳ジョージさんは、【YOKOHAMA AREA 2】というアルバムの時、先方から編集部に”横浜出身のライター”という指定があって、インタビューさせて頂きました」「場所は、レコーディングの合間にランドマークスタジオで、いざインタビューがスタートして、アルバムのコンセプトなど定石の質問をするわけですが、ジョージさんは、『本牧の○○って店、行った事ある?』『いつもどこで飲んでるの?』『○○のナントカさん知ってる?』とか、飲み屋の話しかしないのですよ(笑)。私も一生懸命答えましたが、そうしたら『ふ~ん、まだまだだな』と。当時、ジョージさん45歳で、20代の小娘が来たわけですからガックリしたんでしょうね。期待に応えられなかったと落ち込んだのですが、なんと次のアルバム取材に『またこないだの女性ライターで』とご指名を頂いたのです!!!嬉しかったですね。忘れられない取材です」
「ZARDの坂井泉水さんは、初めてのインタビューだったそうで緊張していたんだと思いますが、全く笑わないんですよ。でも嫌な感じは全然なくて、インタビューをしながら、”なんてキレイな人なんだろう”と、見とれた記憶があります」
「高校時代から大ファンだった、キング・クリムゾンのロバート・フリップ。インタビュー終了時にサインをお願いした所、『今、日本語を勉強中だから宛名を漢字で書きたい』と、私が書いた”佳子”の字を、もの凄い真剣な顔で、私のくせ字を真似て一画一画ていね~いに書いてくれました。字が下手で恥ずかしい思いをした事は数えきれないほどありますが、あんなに申し訳ない気持ちになったのは、あの時が最初で最後です」
素晴らしいエピソードの数々。舟見さんがミュージシャンと向き合う時、そこには”使命感”を持って臨んでいらっしゃる。「私がどうとかって関係ない、と思うようにしています。私はファンの代表である。滅私の心で行っています」
ここ数年は、地元・横浜の音楽シーンの活性化にも取り組まれています。
「新型コロナの影響でライブハウスやライブバーはどこも厳しい状況が続いていますが、ミュージシャンの腕や会場スタッフの技術が落ちないよう、ガイドラインに沿った少ない集客だとしてもライブ活動を継続する事が大事だと考えていますので、ブッキングや宣伝のお手伝いをさせて頂いています」
最近では、関内の老舗ライブハウス・横浜セブンスアベニューに三味線バンド【The Shamisenists(シャミセニスト)】をブッキング。(リード三味線、ベース三味線、ドラムの3人組。既に全米デビューが決定している)「魅力あるアーティストを積極的に紹介していきたいと思っています。又、ハコを遊ばせておくのはもったいないので、横浜でミュージックビデオを撮影したいが良い場所がないかと相談された時には、ライブハウスを紹介するといったコーディネートもしています」
お仕事をされてきて、30年。その時々のリアルタイムで取材をされてきた経験やミュージシャン・アーティストとの信頼関係はかけがえのない宝物だという舟見さん。「皆さんがずっと頑張ってきてくれたからこそなのですが、デビュー当時の状況や世の中の空気感なども踏まえて伝えられるべく、私も感性が鈍らないよう切磋琢磨していきたいです」
舟見さんの活動や近況については、ツイッター/インスタグラムをご覧ください。
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プライベートでは【横浜VICE(ヴァイス)】という、ハードロック・バンドの活動もされています。横浜の原風景を歌ったオリジナル曲も。定期的にライブハウスにも出演されていますので、ボーカリストの舟見さんにも注目です!
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