ファンケル ヨコハマなでしこ - Fm yokohama 84.7

縫いの作家「柵瀬茉莉子さん」

こんにちは!半田あいです。
今回のファンケル ヨコハマなでしこは、縫う事で作品をつくっていらっしゃる柵瀬茉莉子(さくらい・まりこ)さんにお話しを伺いました。

手掛ける作品は、木の年輪に穴を開け、その年輪を辿る様に金糸でチクチク縫っていく木のシリーズや、身近にある花や葉を布に縫い付けていく作品等。「もろくて崩れていくもの、必ずしも強度がある作品ばかりでなくてもいいのではと考えて取り組んでいます」


こちらは【身につける彫刻】という作品。

ブローチになっています。素材は樹皮です。木目や辿る線があるものとはまた変わった観点だそう。「樹皮の一つ一つを見ていると、模様が見えてくる事もあって、そこを辿って縫っていったりします」素材に対して、どうしようかと考えながら縫っているという事。
様々な素材を使う中で、欅の木が日本では割と身近にある樹木だと、日々の散歩や旅行を通して最近気付いたと柵瀬さん。「木の皮が落ちているとなんだか拾いたくなるのです」

柵瀬さんがアートに目覚めたきっかけ、様々な要因があった一つにお祖母さまの存在があります。
「幼い頃から母がいなかったので祖母が母代わりでした。その祖母が刺繍の先生だったのです」近くで”縫う”事を見ていたという環境。「その場から離れて戻ってくると、祖母の手元の縫い目が増えていて、その縫っていた時間が縫い目となってこちらに語り掛けてくる様な感覚がありました」
縫う事が面白く、高校時代にはファッション画のコンクールに積極的に参加を。そこで「デザインはイメージ通り描けても、それを形にする難しさを痛感しました」
苦い思いを経験しますが、柵瀬さんは逆に「極めたい!」と筑波大学の芸術専門学群へ入学。
構成専攻という科の中でクラフトの領域を学びます。木工やガラス、陶芸、更に現代美術の授業も受け、非常に興味深く面白さを感じたそうです。そして、”つくる人”が沢山いる中で、良い意味での差別化をと、自分にしかできない事を探している内、「幼い頃から大事にしてきた、祖母が教えてくれた縫う事と、木や植物等の身近な素材を合わせてみようと思いました」

今年3月から4月に横浜美術館で【New Artist Picks 柵瀬茉莉子展 いのちを縫う】という展覧会が行われる予定でした。新型コロナウイルスの影響から延期へ。現在、秋~冬の開催実現へ向けて検討が重ねられています。
この展覧会には、”縫いの作家”としてのきっかけを与えてくれたお祖母さまが昨年1月にご逝去された事もあり、「これ以上は無いという大きなタイトルですが、この機会に幼い頃からを振り返ってみようというのがコンセプトになっています」
新作には、生まれ育った横須賀・佐島の山が開発されてきた過程を見てきた思いも形にされました。
柵瀬さんの”縫う”という所作から生み出された作品や思いを一日も早く拝見できますように。
横浜美術館のホームページでは展覧会の紹介がされています。会期についてのニュースもアップされていくと思いますのでチェックをなさってください!又横浜美術館ミュージアムショップのサイトにて、【身に着ける彫刻】を購入する事もできます。
柵瀬茉莉子さんのホームページフェイスブックページでも作品等紹介されています。

●これまでもワークショップを行う等してきた茨城県の水戸芸術館との企画【おうちでできるぬいぬいワークショップキット】花びらや葉を布に縫い付けて作品にするものです。まだまだ皆で集まって作業をする事も難しい所、是非お家で取り組んでみていかがでしょうか。今月発売予定。詳しくは水戸芸術館のホームページをご覧ください。


◆なでしこの素◆
同じ大学出身の作家であるご主人との間に、現在3歳のお子さんを子育てされている柵瀬さん。結婚する際ご主人より、「子育てで大変かもしれないけれど、美術の仕事はやめないでほしい」と言われた言葉に励まされ、協力してもらいながら続けているという事。「この言葉が本当に有難くて、忘れないようにしてます」と、かなり照れていらしゃいましたが素敵なお話伺いました!

『蚊帳の家プロジェクト』築170年の山梨県の古民家に眠っていた蚊帳に木の葉を縫い付けた作品。アートとリノベーションの組み合わせというプロジェクトに、当時2歳だったお子さんと滞在されながら作り上げたもので、柵瀬さんにとって非常に感慨深い出来事でもあったそう。

そして、この家に来る沢山の人にも実際に縫っていただくというものでした。柵瀬さんと共に、作品への参加と記憶への縫い込みが一緒にできるという素晴らしい空間。
【蚊帳の家プロジェクト 訪れた人が縫いつけた葉っぱ】

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