God Bless Saturday - Fm yokohama

【ゲストコーナー】海野光行

2023年9月23日のゴブサタは、「~CHANGE FOR THE BLUE~ God Bless Saturday SPECIAL」と題し
スペシャルなプログラムでお届けしました!

15時台には日本財団 常任理事の海野光行さんを
お招きし、海にまつわるお話を聞いていきました。

海野さんは日本財団の海洋事業を統括される常務理事ということで、
全国各地の海や海辺の街に訪れていらっしゃることかと思います。
そして、お名前に「海」の字が入っているのも、何か運命的なものを感じますね。
ちなみに、海野さんは横浜にはよく来られますか?
→はい、よく来ます。「海洋都市横浜」と言われるぐらい海に近い街ですから、
お付き合いをしている海洋関係の企業や団体も多数ありますので、
仕事で来るのは当然なのですが、プライベートでもよく来ますし、 割と昔から横浜市とはご縁があります。

海野さんは豊かな海を次世代に引き継ぐことを目的とした
「海と日本 PROJECT」を 2016 年にスタート。 特に、世界的に深刻化している
海洋ごみ対策に関連する取り組みとして、 実は明日まで日本財団と環境省主催の
「秋の海ごみゼロウィーク」が行われています。 そして、ちょうど今頃・・江の島の片瀬海岸東浜では、
FM ヨコハマが行うクリーンアップの受付が、始まったころですが・・ 先週はパシフィコ横浜で、
この「秋の海ゴミゼロウィーク」のキックオフイベントが 行われたんですよね。
→はい、そうです。横浜市の山中市長や環境省からは滝沢副大臣にもご参加いただいて、
「コスプレ de 海ごみゼロ大作戦」と題した清掃イベントをキックオフとして開催しました。
コスプレイヤーさんをはじめ、関係の企業や団体の皆さんら計 400 人と一緒に、
1時間で合計 56kgのごみを回収しました。
横浜は基本的にはとてもきれいなまちですが、駅の近くなど人が集まるところに、
しかも生垣のような外から見えないところにこっそり
ポイ捨てされていたりするんですよね。そういったものを一気にきれいにました。

ちなみにじゅんごさん、何で海のごみを減らそうというのに街中でごみ拾いしてるの?
(海で拾えばいいのに)って思いませんでしたか?
→実は、「海ごみ」あるいは「海洋ごみ」と、名前に海がついていますが、
海にあるごみの約8割は、街の中で発生したものです。
ポイ捨てされたりしたごみが、雨が降った時に川に流れ込んで、 やがて海に流れてしまっているんですね

大半のごみが街から来ているという事で、街でのゴミ拾いが大切なんですね。
海のご みは実は街から、という意外な事実を教えていただき、
海ごみについてもっと知りたくなってきました。
海野さん、海ごみは今、どんな状況なんでしょうか?
→2010 年時点の推計値となりますが、年間約 800 万tと言われています。
例えば東京スカイツリーが1塔で約4万tの重さですから、約200塔に相当します。

ちなみに日本からは年間2~6万tのごみ出ていると言われています
現在世界の海に流出している海洋ごみの量は、
総計約1億5,000万トンに達しているといわれていまして、
このペースでいきますと2050年には、魚よりもプラスチックごみの量の方が多くなってしまう、という予測もあります。

海ごみにもいろいろありますが、主に
1.流木のような自然由来のもの
2.人工的なもの
の2つに分けられます。特に人工的なものについて、ガラスや鉄などありますが、
プラスチック類が最も多いことが分かっています

プラスチックで厄介なのは、一度海に流れ出てしまうと自然には分解されず、 半永久的に海を漂い続けてしまうことです。 一説には、例えばペットボトルであれば450年、釣り糸は600年も漂い続けるといったデータもあります。

先程申し上げたように、海洋ごみの約8割は陸由来つまり町の中で出たごみが
川や水路をつたって海へ流れ出ています。なにげなく街中で
ポイ捨てしてしまったごみも、いずれは海にたどり着いてしまうということです。
ですから、ビーチや街中での清掃活動はごみが海に流れ出てしまうのを防ぐ“最後の砦”といえますね。

街中での清掃、改めて重要ですね。
ちなみに海野さん、冒頭から気になっていたのですが、
なんでコスプレイヤーさんと活動されているのでしょうか?
→そもそもコスプレとは何ぞや?、ということから説明しますね。
コスプレというのは、マンガやアニメ、ゲームに登場するキャラクターに
扮装することです。ちなみに「コスプレ」と「仮装」は違います。
<違い 3 点>
1 仮装は「非日常の衣装を着て楽しむ」ものですが、コスプレはそれに加えて
その作品、キャラクターに愛があって、「キャラクターを演じる」もの。

2 愛があるので、そのキャラクターの価値を下げることはしない
(飲酒、喫煙、ポイ捨てなど)。

3 趣味として定期的に活動をしている。

コスプレは見た目だけでなく、心までもヒーロー・ヒロインになり切ることを指します。
ですから、ヒーロー・ヒロインとして自分たちの街をきれいに守らねばという意識で、
清掃活動に取り組んでいる方も多くいます。
また、コスプレイヤーさんは街や自然の中で撮影をしますが、
自分たちの撮影するロケーションが汚れていたら嫌だということで、
美化意識や環境意識が高い方が多くいらっしゃいます。
私たちが推進している海ごみゼロに向けた取り組みにも早くから賛同してくださいまして、毎年ご一緒しています。
このように異分野の方々と連携することで、今まで海ごみ問題に無関心だった層も巻き込めているなと感じます。

異分野の方々と連携して、無関心層にアプローチするというのは 重要なことですよね。
他にはどのような方々と一緒に活動しているのでしょうか?
→沢山いるので挙げるとキリがありませんが、例えば相撲です。
つい先日(8 月 26 日)、神奈川県内でのお話、場所は江の島ですが、
お相撲さんたちと一緒に「どすこいビーチクリーン」というイベントが 片瀬海岸で開かれました。
お相撲さんと一緒にごみをひろって、最後はキレイになった砂浜でみんなで相撲を取ろう、というコンセプトで、
新型コロナの影響もあって 4 年ぶりの開催となりました。
当日は大嶽部屋の力士たちにくわえ、一般の方がなんと600名以上参加してくださいました。
ちなみに、特別ゲストとして海と日本プロジェクトの 特別推進パートナーになってくださっているサザエさん、
そしてマスオさん、 タラちゃんも参加したこともあって、当日は大変盛り上がったようです。

これまで海ごみ問題の話を中心に聞いてきましたが、海の問題はほかにあるのでしょうか?
→沢山あります。これも上げればきりがないのですが、最近顕著なものとして「魚種交代・転換」という現象があります。
海水温の上昇や黒潮という潮の流れの大蛇行など様々な要因が関係しているといわれていますが、
昔からその地域で取れていた海産物が獲れなくなってきている・逆に獲れなかったものが
獲れるようになってきている現象を指します。
参考(神奈川以外の事例)⇒例えばさんま(岩手)やイカ(北海道・函館)は獲れなくなってきていることで有名ですね。
一方で、北海道ではブリ、富山ではシイラが獲れるようになってきています。
神奈川(の相模湾)でもこの現象は見られていて、例えば主に沖縄など南方で釣れるキハダマグロなどが近年、
神奈川県沖でもよく釣れるようになっています。

※参考:「たくさん獲れていいじゃん」と聞かれますが、このような魚は地域で食べる文化がないので、
売り物にならず捨てられてしまったり、二束三文で売られたりすることが多いため、
漁業者にとっては死活問題。地元の郷土料理が失われてしまう可能性も。

海と日本プロジェクトについて
オールジャパンで 海を未来へ引き継ごう
※ CHANGE FOR THE BLUE 国民一人ひとりが海洋ごみの問題を自分ごと化し、
”これ以上、海にごみを出さない” という社会全体の意識を向上させていくことを目標に、
日本財団「海と日本プロジェクト」が推進しているプロジェクトです。
※今年は全国・全世界で「スポ GOMI ワールドカップ 2023」を開催

海でも様々な異変が起きているんですね。海は我々人類にとってなくてはならないものですから、
皆の手で守っていかなくてはいけませんよね。
長らく海の分野で活動されてきた海野さんにお聴きしたいのですが、「海の魅力」ってど んなところにあると思いますか?
→一言で言うなら、「怪しい」ところですかね (怪しい?・・)
地球の7割を占める海ですが、実はわからないことだらけなんです。
例えば海底の地形。今の時点で、世界全体の海で1/4(厳密には24.9%。Seabed 開始当初は 6%)しか
解明されていないんです。 さらに、日本周辺の浅い海域(水深 0~20 メートル)は、
実は2%程度しかわかっていないんですよ。
何なら月の地形の方がよっぽど解明されているのです。

地形以外で言えば生物。海の生物は約 200 万種いるといわれているが、
今わかっている範囲で20万種、全体の10%に過ぎないのです。
地形にしても生物にしても「わからないままでいいじゃん」と思いがちですが、
我々人類にとってはこれが大きな損失となります。例えば地形が良くわかれば
より高い精度で津波予測ができるようになりますし、それが災害や事故を防ぐことに
つながります。生物にしても、長年の研究を経て実は医療に有効な物質であることが判明したりしています。

そこで日本財団では、地形に関しては、2030 年までに全地球の海底地形図を
100%完成することを目指す国際的なプロジェクト(Seabed 2030)や、
日本の浅海域の 90%を地図化する「海の地図 PROJECT」、生物に関しては
この先10年で新種10万種の発見を目指すプロジェクト「オーシャンセンサス」を開始したところです。

色んなプロジェクトを手掛けていらっしゃる海野さんですが、 今後、取り組んでみたいことはありますか?
→これも沢山ありますが、一つは水難事故です。2022年度で1346件の事故が確認されています。
もちろん今年も夏場を中心に事故が起き、残念ながら命を落とされた方も多くいらっしゃいます。

全国的に若年層の海離れが進んでいるので、グラフを見ると水難事故全体の発生件数は
減ってきてはいるものの、依然として事故は発生しており、さらにこの数字は横ばい傾向です。
ライフジャケット着用や海流に関する知識など、海の備えに関する啓発も重要ですが、
これだけでは不十分だと思っています。
先ほどご紹介した海の地図 PROJECT 等を通じて、浅い海域の地形データなどが どんどん集まってきています。
このデータの分析も同時並行で進めながら、どうすれば水難事故を無くせるか、
科学的エビデンスに基づいた対策アクションを提示したいと思っています。
全国的に実施できるか、あるいは実証実験的になるかは 検討中ですが、
少なくとも来年の夏には具体的なアクションを実際に展開していきたいと考えているところです。

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