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YES! For You 今回のテーマ「温暖化と農業②」

毎月、第一・第二月曜日は「YES! for you」。
「Zero Carbon Yokohama」をゴールに、
SDGs未来都市 横浜から その今を、発信していきます。

今週も、
農研機構農業環境変動研究センター 所長 渡邊朋也さんが登場!!



温暖化の影響は農業のいろいろな場面に、すでに、現れてきています。
お米だけでなく、くだものの品質の低下や、
家畜では乳牛の乳量や肉牛の体重増加などへの影響も報告されています。
そのため、温暖化への対策は早急に行わなければなりません。
農研機構では気象の予測情報を利用して、イネの穂が高温にさらされることが予測された場合には、
肥料を与える量やタイミングを変えることで品質低下を防ぐ対策技術を開発しています。
また、将来に向けては高温に強いイネの品種開発も欠かせません。
高温でも品質が低下しにくい品種はすでにいくつか開発されています。
山形県で育成された「つや姫」もそうですし、
農研機構では「にこまる」という品種を育成しており、西日本を中心に栽培されています。
温暖化はマイナスの面が強調されますが、プラスの面としては、
たとえば北海道の気象条件がワイン用ブドウ栽培に適してきていることや、
西南日本でこれまで栽培できなかった亜熱帯性の果実、たとえばタンカン、
パッションフルーツやアボカドの生産可能な地域が今後広がることが予想されています。
今後はこういった温暖化条件を積極的に利用することも考えて行かなければなりません。



日本全体から排出される温室効果ガスの中で農業分野からの割合はおよそ4%です。
しかし、世界全体を見ますと、農林業やその土地利用から排出される温室効果ガスは
全体の約4分の1を占めます。農業場面から排出される温室効果ガスの主なものとしては、
農業機械の燃料消費による二酸化炭素、稲作による水田からのメタンの発生、
牛のゲップに含まれるメタン、家畜の排泄物処理過程や農地に散布した肥料に基づく土壌からの
一酸化二窒素などがあります。
世界的に見ても畜産業、水田、肥料散布からの温室効果ガスの発生が
農業分野からの大部分を占めています。
メタンは二酸化炭素の約25倍、一酸化二窒素は約300倍の温室効果があるとされていますので、
これらの発生を抑えることが必要です。
対策として、例えば水田のメタン発生は、水田に水を張っていることで土壌中の酸素が少なくなる、
いわゆる還元状態になった時に発生します。
イネの栽培期間中にはいったん水を抜いて、
地面を乾かすことでその後のイネ成長を促す「中干し」という作業があるのですが、
農研機構ではこの中干しの期間を稲の生育やお米の生産に影響のない範囲で、
一週間程度延長するだけで、メタンの発生を30%ほど少なくできることを明らかにしています。
水田からのメタン発生は世界全体の農業分野の温室効果ガス発生の約10%を占めますので、
このような水管理技術が世界の稲作地帯に広がると
温室効果ガス削減の大きな貢献につながると考えています。
植物は空気中の二酸化炭素を吸収して、成長します。
そのため、作物を収穫したあとの残りの葉や茎、根を地面にすき込むことや、
家畜の排泄物と作物残渣を併せて堆肥として利用することは、
空気中の二酸化炭素を有機物の形で地面に蓄積し、二酸化炭素の増加を抑えることができます。



農作物の栽培によって農地に一度に蓄積される炭素の量はごくわずかですが、
もし、世界の土壌中に蓄積される炭素の量を毎年0.4%ずつ増加させることができれば、
世界の温室効果ガスの増加を防ぐことができるほどの量になるといわれています。
農業に限らず、温暖化対策とくに温室効果ガス削減の取り組みは、
すぐにその効果が現れるものではありません。
だからこそ、私たちの次の世代あるいはその次の世代の人たちが、
温暖化のより深刻な影響を受けることのないよう、いまできること、
いまやらなければならないことをしっかりと実行することが大切だと考えています。




農研機構
http://www.naro.affrc.go.jp

「地球温暖化と日本の農業-気温上昇によって私たちの食べ物が変わる!?」
農研機構編 成山堂書店 ISBN978-4-425-55451-5  2,200円(税別)

 
農研機構技報 No.4(特集:気候変動)
https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/naro/naro_technical_report/134176.html

 
広報誌NARO No.16(特集1「食卓に迫る 地球温暖化の影響と適応策」)
https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/naro/quarterly-newsletter/135484.html







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